鬼を欺く男。 隠す姫と欺く吸血鬼

鬼(おに)とは

鬼を欺く男

文庫本表紙と内容がこれほど乖離した小説も珍しい。 内容はホラーサスペンスなのに表紙のカエル男君可愛すぎでしょ。 これは内容虚偽でJAROにチクらなくっちゃものです。 それはさておき、まず「カエル男」という凡庸なネーミングがイケテル。 ところがこの「カエル男」という題が壮大なトラップの鳥羽口になっている。 連続無動機殺人事件の犯人「カエル男」の独白を間に挟みながら、物語が進むのでその犯人の心の闇とサイコぶりに拍車がかかります。 前半はどうやらサイコホラー仕立て。 殺されるのは、順番に荒尾礼子(OL)・指宿仙吉(老人)・有働真人(子供)。 荒尾は口にフックをかけられ、マンションの13階からぶら下げられた全裸腐乱死体で、指宿は車のトランクに入れられ車ごとプレスされた状態で、有働は全身バラバラ、内臓まで取り出されて砂場に陳列られた状態でいずれも発見されます。 犯行現場には稚拙なひらがなで「カエル男」の犯行表明文章が残されていました。 中山さんのこの猟奇死体の表現がまた微に入り細を穿って、執拗に猟奇的。 ホラー嫌い(怖いの嫌だ)の塩味にとっては前半のこの犯行描写ですでに 「引きモード」となります。 捜査の途中でアイウエオ順に殺されていることが判明し、頭文字が「え」「お」の人々を中心に市民は大騒ぎになります。 ここまでクリスティーの『ABC』かクイーンの『九尾の猫』のまねっこかと思わせ、 更に塩味の興もそげるのです。 このサイコ犯罪に立ち向かうべく、刑事たちは躍起になりますが、最後までカエル男は警察を欺くことに成功し、ついに第4の犯行・衛藤和義(弁護士)が焼き殺されるに至って、市民たちは恐怖とパニックに陥り大騒ぎ。 容疑者リストを出せと住人が大挙して警察署に押し寄せ暴徒化したため、主人公の刑事・古手川は大怪我を負うのでした。 ところがこの古手川の超人的な体力と偶然の手がかりのおかげをもって、403ページ中239ページでやっと連続殺人鬼「カエル男」にたどり着き逮捕します。 と、ここまででもB級ホラー作品としてそれなりに星2個や3個は獲得できるいい出来栄えではありますが、残り60ページ余りでどんでん返しに次ぐどんでん返し。 中山七里さん読ませてくれますねぇ。 サイコ野郎によるホラーサスペンスを、頭脳犯による安全犯罪にまで昇華させてくれます。 ネタバレにならないようにこれ以上は詳しく書けませんが、同じく刑法第39条を扱った小説に通じる名作です。 この小説続編があるようですので読まなくっちゃです。

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【鬼滅の刃】173話のネタバレ【悲鳴嶼・無一郎が透き通る世界に】|サブかる

鬼を欺く男

静寂が周りを支配する。 明らかに気配が変わる。 その男の降臨により。 曰く神域の男。 曰く闇に降り立った天才。 曰く神すら欺く男。 ・・この男を形容する言葉は枚挙に暇がない。 ダービーの目が鋭く尖る。 先程までの、どこか人を喰った様な嘲笑は既に無い。 明らかに同格以上と認めた目。 「ア、アカギさん、よくぞこの魔界まで・・」 自我の崩壊したはずの本部 以蔵が慌てて出迎える。 バカは回復が早いのだ。 それに本部はこの早熟の天才を、自分の心の師と仰いでいる。 無論アカギは大迷惑だ。 「クク・・。 ここで面白いギャンブルが出来ると聞いて来たんだが・・どうやら期待はずれだったらしい」 アカギはダービーを睥睨する。 ダービーの目から初めて余裕が消え、憎悪すら含んだ強い眼差しに変わる。 「あなたの事は良く噂を聞いています・・。 で、何が期待はずれと?」 アカギはタバコを吸って応える。 「アンタは凡夫だ・・。 ククク。 話にならねえ程な。 どうした、勝負の最中だぜ、コールだ・・」 今、まだロビンとダービーのポーカー勝負中である。 ロビンが負ければ、彼女はダービーのコレクションとして 永久にダービーの書斎の棚を飾る、魂のコインとされてしまう。 そしてロビンが勝てば、この階を突破して、 最上階へとパーティは進出できる。 いわば七珍の塔最後の正念場である。 だが、現況は圧倒的にロビン不利。 チップはダービー10枚に対してロビンは2枚、しかもこのコールが失敗すれば敗北は決定する。 「な、何を軽々しく言ってるんだアカギ、これに負ければロビンは・・」 烈が珍しく真面目に叫ぶ。 だがアカギは冷笑を浮かべ取り合わない。 ゆっくりとタバコの煙を吐き出し、そして言う。 「ジリ貧の発想だな。 痩せた考え・・。 こうまで偏った流れを変えるには、地獄を潜らないとな・・」 ロビンが微笑む。 「そうね。 ここで勝負を逃げても、次で終わるわね。 コールよ、ギャンブラーさん」 「アカギ。 分かっているのか、もしロビンが負ければ・・」 烈がアカギに詰め寄る。 「ククク。 他人がどうなろうと俺には関係ねえな」 アカギの胸倉を掴む烈。 だがしかし。 心なしか、ダービーが舌打ちをした気がする。 チッ、と。 無論表情は変わらない。 しかし明らかに、今まで何度かの勝負とは違う気配がダービーを包む。 ・・勝負が再開される。 お互いにカードチェンジを済ます。 残るはカードを開くだけ。 額に汗が浮かぶロビンとダービー。 緊張感が辺りを包む。 烈・桃・本部の3バカも、飛影も陸奥 九十九も一言も発しない。 ただ一人、アカギだけが変わらぬ冷笑を浮かべている。 ロビンとダービー。 静かにカードを開く。 ロビンは4と7のツーペア。 そしてダービーの手。 ・・ブタ。 なんの手役にもなっていない。 ウオオ、と歓声を上げる本部。 ほっと胸を撫で下ろすニコ・ロビン。 ダービーは震えている。 屈辱に。 「ククク・・。 一目見て分かったよ。 アンタは、自分の勝てる勝負しか出来ない凡夫・・」 アカギの言葉に、殺気すら帯びるダービーの視線。 だがそれを軽く受け流し、アカギは続ける。 「アンタは本当のギャンブルをした事が無いんだろ? 所詮、ガキの火遊びで満足する凡夫・・」 ダービーは猛る。 だが内心の怒りを必死に隠して、勤めて冷静にアカギに言う。 「面白いですね・・。 彼女との対戦は止めましょう。 私と勝負出来るのは、アナタだけの様だ」 「いいぜ。 だがただのポーカーじゃ面白くない。 ひとつふたつ、特別なルールを決めようか・・」 一方、人間界。 地上最強の生物・範馬 勇次郎が、仙人・朧の死体を見下ろしている。 勇次郎は動かない。 いや、動けない。 朧の言った最後の言葉が、彼の動きを止めている。 鬼神の様な顔の勇次郎。 あなたは最強を気取っていても、自分が勝てないであろう相手には、決して相手が万全な時には 闘おうとしない・・。 私とも、志々雄とも、魔界3強とも・・。 そして当然、大魔王バーンとも ケッ。 確かにまだ俺はバーンのじじいには届かねえ。 だがこの世界に来てから、俺は更に強くなっている。 いずれ、いやほんの近い将来、俺はバーンを、そして全てを超える存在に・・。 ニヤリと笑う勇次郎。 その時。 勇次郎の背後から、澄んだ女の様な声が掛かる。 だがその声には、確かな殺気が篭っている。 「大物とぶつかりましたね・・。 アナタを倒したら、館長への挑戦権は十分あるでしょう・・」 ゆっくりと振り返る勇次郎。 そこには。 ・・声同様、女の様に美しい青年が立っている。 勇次郎は笑う。 「てめえか。 いいぜ、怪我人だけじゃ喰い足りねえ。 北辰カラテとやら、見せてもらおうかぁッ」 地上最強の生物・範馬 勇次郎 対 北辰空手の天才・姫川 勉、開戦す。 ゆらり、と姫川の周りで空気が揺らぐ。 だが、大きく揺れている訳ではない。 まるで水面に小さな石を投げ込んだ様に、姫川を中心として空気が静かに波紋を生んでいる。 一方、勇次郎。 まるで肉眼視出来る様に、全身から異様な殺気が放たれている。 激と粛。 ただ向かい合っているだけの2人だが、両者の個性の違いがくっきりと滲み出ている。 ほんの一呼吸、姫川が肺に空気を送る。 それと同時、長い脚を前後に開いて、少しヒザを曲げる。 そしてすぅ〜っと左腕を顔の前に置く。 掌は開いたまま。 右腕は腰の横に置き、やはり開手。 「北辰カラテって構えじゃねえな。 伝統派ってやつか、面白え」 その勇次郎の言葉に姫川。 「私は別に、北辰館の門下生ではありませんからね。 松尾 象山を倒す為に近くにいるだけです」 勇次郎は構えていない。 だが、今までポケットに突っ込んでいた両手を、スッと外へ出す。 「お互い、準備は良いようですね」 艶やかとも言える様な微笑で、姫川が言う。 「ケッ。 分かってるぜ、てめえの本性・・。 お上品ぶる事はねえ、本当のてめえで来な・・」 勇次郎の言葉を受けて、姫川の顔にまた微笑が浮かぶ。 だが先程までの優雅な微笑ではない。 笑みに冷徹さが宿っている。 美しい仮面の下に隠した悪魔性が、その表情に滲み出ている。 「さあ、俺を楽しませてくれや。 松尾 象山の懐刀とやらッ!!」 間合いは一足の間の、ギリギリ外にある。 即ち、お互いの足技が届かない距離。 勿論手技もだ。 この2人にとって、そんな間合いは無きに等しい。 ただ今のままでは、攻撃が届かないというだけだ。 どちらかがその気になれば、瞬きする間に殺傷圏に入る。 だが2人はまだ動かない。 睨み合ったまま。 姫川は構えのまま厳しい顔。 対して勇次郎は、両腕をダランと垂らし、見下した笑みを浮かべる。 動いた。 姫川である。 だがその動きは、構えたまま後方へジリジリと下がっている。 間合いが広がる。 怪訝な顔の勇次郎。 ついに2人の間合いは、最初の対峙の時の倍ほどに広がってしまった。 「おい・・。 逃げてえんなら追わねえぜ。 とっとと消え失せいッ!!」 勇次郎が猛て吼える。 だが姫川。 充分に間合いを空けたその場所から、フッと蹴りを繰り出す。 勇次郎の視界が塞がれる。 (目の前の土と石を蹴りやがったか。 小賢しいわッ!!) 勇次郎は怒り狂い、前へ出る。 しかし大量に蹴られた土が目に入り、僅かに勇次郎の左の眼球を刺激する。 勇次郎に一瞬隙が出来る。 同時に姫川は右前方へ走り込んでいる。 左目が一瞬利かない勇次郎。 ぶうん、と裏拳を振り回す。 だがその裏拳を姫川はギリギリで避わす。 ふっと姫川の右足が消える。 ・・バシぃぃッッ!! 豪快な音が響き渡る。 姫川の芸術的な右上段廻し蹴りが、これ以上無い角度で勇次郎に決まっている。 「面白ええぇ・・。 思ったより美味そうだな、てめえは」 鬼が悦びの表情でそう言った。 「言ったでしょう。 あなたの首を手土産に、松尾 象山に挑戦すると」 姫川も釣られて笑う。 勇次郎の両腕がすっと左右に大きく開く。 ・・範馬 勇次郎、本気の構えである。 勇次郎の本気の構え。 ・・それは、人間技を超えた速度・威力の拳と蹴りを、ただただ振り回し敵を屠る。 たったそれだけの技だが、決して見切れず破れずの、勇次郎不敗の構えである。 勇次郎は姫川に言う。 「褒めてやるぜ姫川・・。 まさか、てめえにこの構えを使う事になるたぁな」 「そうでなくては困ります・・。 その構えの範馬 勇次郎を倒さないと、松尾 象山には勝てませんからね」 その答えにかっと熱くなる勇次郎。 「小僧ッ、誰に向かって口を利いてやがるッッ!!」 みちり。 地面に肉片が転げ落ちる。 はっとする姫川。 左腕に痛みを感じる。 見ると、肉をエグり取られている。 (いつの間に・・?) 驚愕の姫川を尻目に、オーガと化した勇次郎の猛攻が始まる。 勇次郎の両腕が閃くたびに、姫川の肉体が血に塗れる。 そして新しい肉片が地に転がる。 まるでヤスリの様に。 「この範馬 勇次郎に吹き上がるたぁ・・、物知らぬにも程があるッ!! 刻み殺してくれるわッ!!」 姫川は構えを小さく絞り、完全にガードの態勢。 ダメージが蓄積されていく。 だが頭は逆に冷静になっていく。 でんとうはからてのごくい。 ・・そんな言葉が姫川の脳裏に浮かぶ。 そうだ。 伝統派の寸止め。 それだ。 寸止め。 それを直接打撃性(フルコンタクト空手)の空手家が言う時、多分に卑下した物言いになる。 そして実は、「寸止め空手」と伝統派空手を揶揄しているのは、当の姫川が所属している北辰会館である。 だが姫川は、元々伝統派空手の出身である。 それが松尾 象山と闘って以来、北辰会館に身を置いている。 だから、姫川は知っているのだ。 寸止め、とは技術なのだ。 「寸止め」自体を極めれば、恐るべき技法なのだ。 勇次郎の恐るべき攻撃に身を固めながら、姫川はポツリと言う。 ・・見切った、と。

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『連続殺人鬼カエル男』ネタバレ!真犯人や結末は?ラスト1行に鳥肌!

鬼を欺く男

肩で荒い呼吸をする少女の霞む視界、遠くの湖上に白亜の巨大な船体があり、手前には漆黒の小さな船体があった。 その姿を目の当たりにした少女は、すがっていた希望を失ったかのように、その場で砂浜に膝をついてしまう。 今まで全力で走り続け、呼吸は荒く、その目には涙さえ浮かべていた。 「おやおや……」 ステフの様子を潜水艇の甲板から見下ろしながら、サジヴァルドが愉快そうに声を漏らしていた。 「クックックッ……大丈夫ですかぁ? しっかりしていただきたいですねぇ。 折角ここまでたどり着いたのですよ。 あとは、この中に入って、あの白い船まで戻ればいいだけでしょうに。 もしここまで自力で上ってこれないようでしたら、わたくしめがやさしィく、抱き上げてお連れしますよ?」 吸血鬼の下卑た声に、少女は視線だけを彼に向ける。 しかし、その視線に先ほど対峙した時ほどの鋭さがなかった。 目の前の現実を認めたくないと訴える、涙に濡れた瞳。 待ち焦がれた彼女のその瞳、舐めればきっと至高の甘味であろうその涙。 吸血鬼の鼓動は 淫 いん 靡 び なリズムで高鳴っていく。 「そこは……」 恍 こう 惚 こつ になっていくサジヴァルドの眼下で、涙を瞳いっぱいに溜めたステフが、絞るように声を上げ始めていた。 「そこは、あたしの場所なんだからぁッ。 どいてよッ、変態ッ!」 唇を恐怖に震わせ、涙声で罵倒する彼女の姿、耳に届く絶望が混じった声のなんと美しいことか。 その音色は、さながらピアンオ(ピアノ)とかいう人類の楽器、その鍵盤をでたらめに叩きつけたかのようだ。 「これはこれは、大変失礼しました。 しかし、ここが貴女専用の場所というならば、なおのことどうぞこちらにお越しを。 もう一つグラスを用意いたしますよ。 今宵の《赤》は月に合う。 ……無論、貴女の高貴で汚れのない血には及ばないでしょうがねぇ……クックッ……っははっ……はぁっハハハッ」 努めて 慇 いん 懃 ぎん に言葉を発していたサジヴァルドだったが、これから訪れる甘美な宴を思い、堪えきれなくなって高笑いを始めた。 不気味な声が湖面に響き、背後の林から木霊して、涙するステフの鼓膜を打った。 ついに膝をついたまま、がっくりと俯いてしまったステフ。 その両肩も力なく落とされ、両腕は外套の中でだらりと垂れている。 せめてもの抵抗の意思が残っていたのなら、当然のごとく銃把を握っていただろう右手は、《衝撃銃》を持っていなかった。 「もう……終わり……よ……」 ステフが俯いたまま諦めたように言葉を漏らした。 悲痛な彼女の言葉を耳にし、サジヴァルドが勝利に酔って唇を愉悦に歪ませながら、天空の満ちた月を仰ぎ見る。 月の銀光に身を照らし、ステフが 琥 こ 珀 はく の瞳から涙を溢れさせた。 月光に光る涙が伝う頬、その頬の隣、艶やかな薄い朱の唇が、恐怖と不安に震えていた…………。 彼女は、《衝撃銃》の代わりに握っていた、ペンのように細いリモコン装置のスイッチを押下した。 それでも罠であるという危機感から、その場を飛び去ろうとするが、身体全体に力が入らない。 というよりも、体中の魔力が吸い尽くされそうな感覚を覚えていた。 「……馬鹿な。 この船体には攻撃の《理力器》など何もなかったはず」 驚愕するサジヴァルドの周囲に、蒼白いプラズマが走り始める。 よく見ると、いつの間にか潜水艇の外壁に、数え切れないほどの小さなアンテナ 様 よう のものが乱立していた。 「ええ、《理力器》を使った兵器はないわ」 砂浜に立ち上がったステフが、シャツの袖で自らの涙を無造作に拭う。 その声は、つい今し方の弱々しい涙声ではなく、夜の澄んだ空気によく通る凜としたものだった。 「そう……《理力器》じゃなくて、そこにあるのは《 反理力器 アンチ・フォース・デパイス 》。 《 活力 マナ 》を根源とした周囲のありとあらゆる《力》を吸収して分解するものよ……。 もちろん、貴方の魔力もね。 ……こんなこともあろうかと、用意しておいたの」 少しだけ科学者的な 悦 えつ に浸るステフの言葉通り、サジヴァルドは、どんどん魔力を失っている。 どうやら、潜水艇全体を包み込む力場が、月の魔力さえも打ち消しているようだ。 「こっ……こんな……こんなものを用意していた……のか?」 草色の外套に着いた砂を、はたいて落としているステフを、毒々しい瞳で 睨 ね め付けるサジヴァルドだったが、すでに言葉を発するにも億劫になっていた。 彼は、魔竜としての肉体を《魔》に捧げて今の魔力に満ちた肉体を手に入れた。 故に、魔力がある限りその身は不滅だが……魔力がなければ、その存在を保つことは出来ない。 「この《反理力器》は、 アーク王国 うち の 王立科学研究所 ロイヤル・ソサエティー が、貴方みたいな魔法に長けた魔竜を相手にするために開発したものよ。 《理力器》は使えなくなっちゃうから、その機構は既存の理力科学で開発されていないの。 貴方もこの潜水艇は調べていたんでしょうけど、《理力器》じゃないからこれに気付いてないと確信していたわ」 「ご……ごの……小娘ぇぐがああああッ」 すでに、サジヴァルドの肉体は、その輪郭を崩し始めていた。 そんな彼の姿を半目で睨みつつ、冷たい言葉でステフは続ける。 「この《反理力器》まで使うとは本当に想定外だったけど。 正直、向こうの林の方で貴方と遭遇したときは、心臓が止まるかと思ったわ。 でも、あの場を何とか切り抜けて、私が貴方から必死にここまで逃げれば、きっと貴方はここで待ち伏せていると信じてた」 ステフはその琥珀に輝く瞳を一度閉じて、リモコンを手放し、そのままシャツの生地越しに胸元のペンダントを握りしめる。 一度大きく息を吸い、次の言葉を続ける。 「だって、貴方、女性にとって最悪の趣向の持ち主だもんね。 レイナー号を襲うのだって、本当ならもっと人里から離れた、海の上とかでも可能だったはずなのに、わざわざ目的地間際で襲ったり、林で遭遇したときも、わざと気配を少しずつ強くして、こちらの不安を煽ったり」 言葉を句切って、ステフはうんざりといった風にため息を吐いた。 琥珀の瞳に怒りの輝きを込めて、苦しむ吸血鬼を見据える。 「だから、あたしが必死で逃げて、この潜水艇にたどり着き、船にあとちょっとで逃げ帰れると安堵する、その瞬間にこの場へ姿を現した。 …………あたしが安堵から一気に絶望する、その姿を眺めて楽しみたいがために」 「ぉ……の……れ……ぇ……」 その身を崩しながら、断末魔の声を微かに漏らす吸血鬼。 その姿に向かって、ステフは最後に言葉をつなげる。 「騙したりしてごめんね、変態さん。 ……ええ本当に心から悪いと思っているわ。 でも……よく言うでしょ、涙は女の武器って……いざって時に馬鹿な男を欺くためのね。 その視線の先で、もはや言葉もなく、サジヴァルドの肉体が粉々に崩れて、跡形もなく消滅する。 本来ならば絶対的な魔力を誇る、満月下の吸血鬼。 不死であるはずのその肉体が、あっけなく、科学の生み出した兵器によって完全に滅び、周囲には静かで美しい月夜、その澄んだ空気だけが残った。 「でも……結局、今ので潜水艇の《理力器》や理力エンジンもダメにしちゃった。 ……もう船には戻れない」 力なく呟きながら、彼女は襟元に手を差し入れ、胸のペンダントを服の中から取り出した。 緋色の宝石が埋め込まれたペンダントヘッドを、両手で胸に抱くように強く握る。 人智を超える絶大な戦闘能力を有する魔竜との戦い。 父の語った思い出話にしか出てこなかったそれが、よもや現実の驚異としてこの身に降りかかるとは……。 今更になって、少女の身体は小刻みに震えているのだった。 - Illustrator かぼちゃ 「シーフと一緒に世界を救ったってのは、コンプライアンス的に色々とマズいんだ」 そんな意味の分からない理由で勇者パーティを追い出されたシーフのカナタだったが、故郷へ帰ろうにも、そこは魔王の城に最も近いサイハテの街。 宿や食事代は超高額、街を一歩出れば強敵モンスターだらけ、しかも財布の中身は無一文……。 だが、そんな絶望的状況での「水の精霊エレナ」との出会いが、彼を……いや、世界の運命を大きく変える事になる。 カナタに課せられた使命はただ一つ。 それは、かつて誰にも知られる事無く悲劇の結末を迎えた者達を全員救い、この世界が平和を迎える「真のエンディング」へと辿り着くこと! 16歳、青春真っ盛りながらも女の子にモテたことのない少年サブローは、念願の異世界行きを果たす。 「異世界と言えば美少女とのキャッキャウフフ。 夢はハーレムだよね!」と期待に胸を膨らませるサブローだったが、異世界も現実の壁は厳しかった……。 基本はコメディーですけど、バトルや恋愛、シリアスの要素もそれなりに入ります。 サブローは異世界転移前に地獄で鬼たちによる猛特訓 笑 を受けているため、かなり強いです。 物語が進むにつれて、ケモノっ娘・令嬢・メイド・女騎士・魔法使い……と、複数名のヒロインが出てきます。 但し、一般的美少女形態 ? とは異なるケースが存在しますのでご注意を。 本作は、第3回「マグネット!」小説コンテストで金賞を受賞しました。 表紙イラストは、成瀬ちさと先生に描いていただいております。 「小説家になろう」様、「MAGNET MACROLINK マグネット! 」様にも投稿中。 これは、可愛いJSが、自分を生き抜くために、突然現れた兄と、次々増える仲間と、大好きな動物たちと共に、転移してしまった異世界で、願いを叶えるために旅する物語。 突然、両親が行方不明になった、ごく普通の生活を送っていたはずの智奈《ちな》。 智奈の前に転校生として現れたのは、謎の少年、霧亜《きりあ》だった。 お前は異世界の人間で、オレの妹だ。 異世界からやってきた魔術師だと主張する霧亜は、智奈と謎の同居を始める。 霧亜と仲良くなったとあるヤンキーと遊んでいた所に、嫉妬に狂った女子が暴れ出して…!? 霧亜は隠していた魔術の力での戦闘を余儀なくされる! そんなこんなで、ある事件に巻き込まれた二人は、霧亜のやって来た『第二の世界』に転移してしまった。 そこは、獣化動物という妖怪や神獣が元となった生き物たちと共存し、魔術師と体術師によって深い溝のある不思議な世界だった。 元の世界に帰りたい智奈は、願いを叶えてくれるという「四神」の伝説を求めて、霧亜と共に旅に出ることにした。 ちょいちょい現れる霧亜の第一の世界の漫画、小説、ゲームなどの文化好きパロ発言。 魔術!体術!美少女!イケメン! 銀髪隻眼!金髪赤眼! 幼女!ショタ!美魔女!イケおじ! 動物!妖怪!神獣! 刺され誰かの性癖に! 魔術師と体術師の間に生まれた禁断の人種『混血人種』として翻弄される、兄妹の冒険本格ファンタジー。 サブタイに迷走しているので表紙と違うことが多々あります カクヨム、小説家になろう、でも連載しています.

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