本好きの下剋上 オティーリエ。 3期決定 本好きの下

【本好きの下剋上】 香月美夜総合スレ 406冊目

本好きの下剋上 オティーリエ

表題 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~• 著者 香月美夜(かづきみや)• ジャンル ファンタジー• 出版社 TOブックス• 初出 小説投稿サイト「小説家になろう」• 連載期間 2013年9月~2017年3月(全5部677話完結)• アニメ 第1部 2019年10月~12月(全14話) 第2部 2020年4月~6月(全12話)• コミック 第1部・第2部 鈴華 著 第3部 波野涼 著 あらすじ この作品は,「小説家になろう」で連載された異世界転生もので,書籍化され,アニメ化され,コミカライズされ,ラノベガイドブック『このライトノベルがすごい! 』の単行本・ノベルズ部門で2018年と2019年に1位を獲得している。 故に「ラノベ」と呼ばれる作品群に含まれると思われるが,壮大な世界観や練り込まれた舞台設定はとても「ライト」と言えるものではなく,ハリー・ポッターシリーズにも匹敵するほどのしっかりとしたファンタジー小説であると思う。 長い長い物語だが,表題が全てを語っている。 本狂いと言っても過言ではないほど本が大好きな女性が,司書になる夢を叶える直前に死亡。 兵士の娘マインという5歳の病弱な少女として異世界に転生する。 しかし,マインが転生した家には本の1冊どころか,文字が見当たらない。 識字率がとても低く,紙も印刷技術も存在しない世界だったのだ! その世界の本は羊皮紙に手書きで作る大変高価なもので,下町の労働者階級であるマインの家族には無縁なもの。 両親は本と言われても「意味わからない」って感じだし,まともに字を読むこともできない。 生活レベルは11世紀とか12世紀くらいだろうか。 トイレもシャンプーもないクオリティの低い生活であっても,本さえあれば耐えられる! そう思ったのに,本はないし,両親はひどく教養がない。 マインは絶望し,怒り,不屈の精神で本に囲まれて暮らす生活を目指し始める。 本がないなら作ればいいじゃない。 司書になってやる! 現代日本で読書をしまくって得た知識を生かし,マインは文字通り下剋上を繰り広げる。 紙の製法を確立し,職人を囲って活版印刷機を作り,本を出版し,人々の教養を高め,それらの過程で自らも平民から貴族へ,領主の養女へ,やがては女神の化身と言われるまでに地位を上げる。 そして最後には「本に囲まれた生活」を実現させるのだ。 第一部から第五部までの構成は下記の通り。 第一部は単行本3巻に渡るが,プロローグみたいなものだ。 物語が進むにつれ,世界観が明らかになり,領地から国へと舞台は広がっていく。 第二部が全4巻,第三部が全5巻。 第四部が全9巻。 電子書籍(Kindle)では各々合本版が出ているので,そちらを読むと便利だ。 第五部は書籍化途中だが,続きが気になったらWebで読める。 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘」(全3巻) 第二部「神殿の巫女見習い」(全4巻) 第三部「領主の養女」(全5巻) 第四部「貴族院の自称図書委員」(全9巻) 第五部「女神の化身」(?) 何しろ冊数が多いので,電子書籍の合本版がお勧め。 転生したマインは近所の子供達と一緒に森へ出かけるようになる。 森で生活に必要な食料や薪などを採取するのは,子供達の重要な仕事なのだった。 そこでマインは近所の面倒見が良く優しい少年ルッツと親しくなっていく。 また父の仕事場を訪れた時,父の部下で文字が読めて計算が出来るオットーという男性と知り合い,文字を習う機会を得る。 商人になる夢を抱いていたルッツに,以前は商人だったオットーを紹介して欲しいと頼まれたマインは気軽に紹介するが,そこにオットーの義理の兄,ギルベルタ商会の主人ベンノが現れる。 そしてマインはベンノという後ろ盾を得て,紙作りを始める。 紙作りや髪飾りなどの商品を売るようになり,マインとルッツは商業ギルドへ登録。 ギルド長の孫娘フリーダと知り合って,マインの熱が「身食い」という魔力によるものだということがわかる。 身食いは貴族が持つ高価な魔術具を使わないと,遠くない未来に命を落とすことになるということだった。 しかし,マインは貴族へ自分を売り込むことより,残された時間を家族と過ごすことを選ぶ。 そんな中で,マインとルッツは揃って洗礼式を迎え,儀式のために神殿を訪れる。 どうせ死ぬのだと思っていたマインだったが,神殿で巫女見習いになることが決まり,生きながらえることが可能となる。 巫女見習いとして神殿に入ったマインの1年間。 神殿に入ったマインが考えることは図書館で読書をすることばかり。 静かな読書時間を確保したいがために何故か孤児院長をすることになる。 だが,孤児院をマイン工房にすることで,紙の製造を進めていく。 また前世で食べていた美味しい食事をもう一度実現したいという想いから,ルッツやベンノを巻き込んでイタリアンレストランの準備を始め,活版印刷のために職人を探したりと奔走しまくる。 自分のやりたいことしか見えていなくて,この世界では誰も知らない「グーテンベルク」の名前を出し勝手に称号にしてはしゃぐマインがウザくてたまらないが物語は面白い。 領主のジルヴェスターが登場し,物語は大きく動く。 マインはローゼマインとなり,カルステッドを父としエルヴィーラを母とする上級貴族の娘として洗礼を受ける。 その後,領主ジルヴェスターの養女となり貴族院に入るまで,神殿と城との往復生活が描かれる。 貴族関係の登場人物がいきなり増える。 母となったエルヴィーラに兄となったエックハルト,ランプレヒト,コルネリウス,養父母のアウブ・エーレンフェスト(ジルヴェスター)と第一夫人フロレンツィア,義理の兄ヴィルフリート,義理の妹シャルロット,新たな護衛騎士のブリギッテとアンゲリカ,新たな側仕えリヒャルダとオティーリエ。 ハッセの町に新しい孤児院を作ったり,ブリギッテの故郷であるイルクナーで紙作りなど事業を広げていく傍ら,貴族の派閥争いの陰謀に巻き込まれていく。 2年間のユレーヴェの眠りから覚めたローゼマインは10歳で貴族院に入る年齢。 眠っている間の遅れを取りもどすためフェルディナンドから詰め込み教育を受け貴族院へ向かう。 教師や新しい側近,他領地の領主候補生や王族など新たな登場人物で物語に深みが増す。 2年間眠っていたローゼマインは,ただでさえ小さかったのに2年間を失い規格外の小ささ。 一人だけ小さくて目立つのに,貴族院でも図書館まっしぐらの考え無しの行動で悪目立ち。 麗乃時代(前世)はこうだったからと単純に気安く言動する稚拙さが不思議すぎるが,ヴィルフリートとコルネリウス,そしてリヒャルダのローゼマイン管理の優秀さは一つの見どころ。 貴族院に入って,貴族の印であるシュラーブを得て,通信手段のオルドナンツを扱えるようになる。 またディッターという貴族の騎士達が好む独特のスポーツが登場。 貴族院で注目を浴びるローゼマインをエーレンフェストに留めておく策として,ローゼマインとヴィルフリートは婚約することになる。 隣の大領地アーレンスバッハや領地内の旧ヴェローニカ派貴族との軋轢の中で,ランプレヒト兄様に花嫁がやってくる。 貴族院での2年目が始まる。 ハンネローレやヒルデブラント王子と共に図書委員をすると張り切るローゼマイン。 魔石の作り方の実習や,名を捧げたいと悩むローデリヒ,エーレンフェストの森へ現れた質の悪い魔物ターニスベファレンとの戦いなどなど。 ターニスベファレン退治の件での事情聴取や魔石のネックレスなど,とにかくフェルディナンドの優秀さが際立つ。 ローゼマインの保護者たちは報告を受けながら胃に穴があきそうだ。 ターニスベファレンの件で聖典に注目が集まり,物語が更に動き始める。 関連して,中央の聖典至上主義者と王族の問題など,視点がエーレンフェストから国全体へと広がっていく。 ローゼマインの貴族院での2年目が終わり,頼もしくローゼマインを守っていたコルネリウス兄様とハルトムートが卒業。 王命が下ったフェルディナンドは,エーレンフェストを去って行く。 ネタバレ上等!言いたい放題 以下,ネタバレ無視で書き殴った好き勝手な感想。 本編を最後まで読み終えた方か,ネタバレを気にしない方のみご覧下さい。 主人公たるマインが兎にも角にもマジウザい! 「小説家になろう」冒頭の作者コメントで,作者自らが注意を促している。 曰く, 最初の主人公の性格が最悪です。 ある程度成長するまで、気分悪くなる恐れがあります。 正直言って本当に主人公の性格は最悪だ。 私に言わせれば,ある程度成長しても別に性格は改善されない。 マインは自分のことを「自重を忘れた女」と称しており,本人にもそういう自覚はあるようで,実に快いまでに自己中の極みを貫く。 私は最後まで読み進んでもその性格を好きになれなかったし共感もできなかった。 最後までマインのことは嫌いだった。 そもそも,元の世界では成人し大学を卒業し司書として就職まで決まっていた大人の記憶を持っているマインなのに,何故ここまでバカなのだろう?というのが最初の疑問。 司書になれるほどしっかり勉強した人が,家の中の様子を見て,本が存在しないか,こんな貧乏な家には無縁な高嶺の花であることくらい容易に想像できないのだろうか。 前世の記憶を持っていても,5歳の少女の肉体に住んでいるため,身体が持つ幼い思考に引きずられているのだろうかと考察することもできる。 だが,そうであるなら,本を作るために頭脳から引き出される知識は生半可ではない。 いや,生半可どころの騒ぎではなく,専門書がそのまま頭に詰まっていても無理なレベルだ。 あまりにもアンバランスだと思う。 物語を楽しむために,これらの矛盾は「俺TUEEEな転生チート」だと目をつぶることにしたのだが,引っかかりは消えなかった。 前世への異常な執着がマインのウザさに拍車を掛ける。 活版印刷技術の発明者とされるヨハネス・グーテンベルクは,この世界では確かに偉人だ。 だが,この世界でだって11世紀や12世紀の人々に「グーテンベルクだよ!」と言ったところで理解されない。 それなのに,マインは異世界の印刷技術以前の人々に向かって「グーテンベルク!」なのだ。 意味不明に決まっていることが分からないのだろうか。 大卒の図書館司書に分からない筈はない。 相手が分からないに決まっていることを知りながら,わざと意味不明な単語を使っているのか? 興奮のあまりそういった分別を失うほど人間性が未発達なのか? グーテンベルクに限らず,このように前世の単語を当然のように持ち出して会話相手に突きつける事例はいくらでもある。 極めつけが最後に領地の名前を決めるときだっただろうか。 アレキサンドリアかベネツィア? 別の世界の実在の街の名を領民全体に押しつけるとは! いやはや私だったら心底止めて欲しい。 異常と言えば,マインの家族への執着も迷惑なレベルだ。 最初は本のために幾らでも利用し犠牲にする感じだった家族だが,前世の母親への申し訳ない気持ちを思いだした途端に最重要な存在となる。 生まれた途端に引き離され会うこともなかった弟までを溺愛する。 家族は領地の外へまでもマインについて行くが,詳しく書かれている街のギルドや組合の仕組みを考えると無理無謀な行為にしか見えない。 マインに触発されて子供の頃から頑張った姉のトゥーリだけなら,マインの行く所へついて行って仕事をしようとするのもまだわかるのだが。 義理の妹シャルロッテに対してお姉様ぶりたい要求の激しさにも辟易だ。 バカなの? 魔力や座学など能力だけ高く生意気で自己中な養女のマインが,そこまで尊敬と憧憬の念を持って領主一家の子供達に受け入れられ大切にされることが,とても不自然に思えた。 ヴィルフリートもシャルロッテもメルヒオールも,嫉妬心など邪な心は一切無い澄み切った心を持つ人格者なのだろう。 そうとしか思えない。 ほんと,この自己中で暴走だらけで自重を捨て去ったトラブルメーカーのマインが,義理の家族や側近達に非常に大切にされ愛され尊敬されていることが,最後まで不思議かつ納得できなかった。 ただ,マインの活動は領地や国家に大きな利益ももたらすので,利益を考えれば合点がいく気もする。 マインの魔力が王族などものともしないほど強大で,しかも全属性であるとかチートすぎるわけだが,一応マインが全属性であることや魔力が強くなったことは,この世界の仕組みに基づいて理屈で説明されている。 マインの自己中で破綻した性格は,大変不快なものではあるが,このように某かの大きな事をやり遂げ世界を変えてしまうような人には,こういった周囲の人のことなどお構いなしに突っ走るような異常さが必要なのだろう。 周囲の人々に気を遣い,やりたいことを我慢するような心優しい人がマインのような業績を残すのは,難しいかもしれない。 ローゼマイン(マイン)にはイライラさせられっぱなしだったが,偏った分野では非常に賢いし機知に富んでいて面白い。 下町の面々は隠し部屋と寝台。 お父様と養父様は、他者の進入を防ぎ守り外に出さないための扉。 エルヴィーラとリヒャルダは暖炉。 明るく暖かく必要だけど近づきすぎると火傷する。 護衛騎士たちは大切な物を守ってくれる本棚。 ダームウェルは鍵のかかる書箱。 神殿の側仕えは執務机。 公私の仕事をし本を読む。 ヴィルフリートは背もたれがない椅子。 ひと息つけるけど寄りかかれない。 前ライゼガング伯爵は暖炉の上の棚の細かい細工の置物。 フェルディナンドは長椅子。 本を読んで寛げる。 でも完全に身体を預けて眠ってしまうとあちこち痛くなったり風邪を引いたりする。 もし彼がいなければ,マインは魔力の威圧で神殿長を殺し,その罪で処刑され,物語は第一部でさっさと終了してしまったことだろう。 そもそもフェルディナンドは,マインが神殿長を威圧したとき,何故止めたのだ? 放置してマインに神殿長を殺させれば,神殿長に苦しめられていたフェルディナンドとしては万々歳ではないか? これだけの魔力を持つマインは,今現在エーレンフェストに不足している魔力を得るための貴重な存在なので確保しておくべきと,瞬時に判断したのだろうか。 しかも,フェルディナンド自身も威圧に巻き込まれて辛い状況の中だったにもかかわらず,少ない言葉でキチンとマインを正気に戻した。 優秀すぎる。 マインが巫女見習いとして神殿に入った時,フェルディナンドは確か21歳。 幾ら貴族院で全て最優秀の成績を収めた秀才で,領主の弟として貴族社会及びユルゲンシュミット(国)について詳しい知識を持っていたとしても,たかが21歳だ。 大学3年生程度の年齢だ。 それなのに神殿業務をほとんど請け負い,領主の仕事を手伝い,騎士団の仕事を手伝い,その上マインの面倒まで細やかに見る。 いや無理でしょう。 できすぎ。 そう,「マインの面倒を見る」というのは並大抵の子供の監視ではないのだ。 マインは貴族や神殿の常識を持たないことは勿論,前世という異世界の常識で動き,次々と想像を絶した問題を起こし,敵を作りまくる。 しかもマインはこれまた想像を絶した虚弱体質で,非常に気をつけていなければ簡単に熱を出して倒れる。 そんな非常識の化身のような彼女の尻拭いをし,教育を施すのだ。 マインを教育し導くためにはマインを理解しなければならないわけだが,異世界の常識で動く彼女を理解するにはもの凄く柔軟な発想力が必要となる。 だが,フェルディナンドは優秀な頭脳と論理的思考によって,この上なく上手にマインをコントロールするのだ。 フェルディナンド自身の環境により必要だったにしても,製薬に精通し,虚弱なマインが活動できるように専属医師&専属薬剤師として健康管理まで完璧にこなす。 チート過ぎる。 結局のところ,優秀で努力家でやることなすこと規格外で刺激的なマインをフェルディナンドはかなり初期から気に入っており,ローゼマイン(マイン)がしでかすあれこれに翻弄されつつ面白がってもいたのだろう。 物語後半になって徐々に,フェルディナンドがマインと双璧を成す規格外であることが分かっていくが,ユルゲンシュミットの建国神話に登場し歴代ツェントにグルトリスハイトを授けてきたエアヴェルミーンに対し,フェルディナンドは非常に無礼な態度で接し嫌われていることに驚いた。 マインに対してあんなにも貴族らしく上品に振る舞うよう教えていたのに,実のところ,彼自身,見事に表面上取り繕っていただけだったのだ。 本質は回りくどい貴族の習慣とは正反対の合理主義者で,目標を達成するために必要とあらば最短で動く。 フェルディナンドは本質的にマインとそっくりな性格なのだった。 兎にも角にも,フェルディナンドが存在し,フェルディナンドがいるエーレンフェストにマインが生まれ二人が出会う。 この二つがなければユルゲンシュミットは崩壊したであろうし,ユルゲンシュミットで印刷技術が発展する機会は何世紀も先になったことだろう。 アダルジーザの実であるフェルディナンドがエーレンフェストの領主一族として生きながらえていたことは奇跡であるし,異世界から転生した異常な性癖(本好き)を持つローゼマインの存在も奇跡。 二つの奇跡が絡み合って事が進んでいくのだから,マインの転生はそもそも英知の女神メスティオノーラが仕組んだこととしか思えない。 ローゼマインの側近たちが面白い マインがローゼマインとなり貴族社会に取り込まれた時に,カルステッド一家や領主一家など登場人物がどっさり増えるが,その後ローゼマインが貴族院に進学すると,更に側近たちがどっと加わり,登場人物を覚えるのが大変になる。 しかし,この側近達が各々個性豊かで面白い。 是非とも全員の性格や役割を把握しておくのがお勧めだ。 人気投票で常に上位に食い込むのはダームエルだったようで,確かにマインの最初の側近であるダームエルは,最後まで優秀な側近として活躍する。 しかし,他の側近達もなかなか楽しい。 ローゼマインの義兄で,ローゼマインが領主の養女となった時からずっと護衛をするコルネリウス。 本当の兄のようにローゼマインと仲良しだし,過保護だ。 しかしそもそもの血筋が良いせいか,優秀でどんどん頼りになる護衛騎士に成長していく。 コルネリウス兄様がいてくれると,私はいつも安心して読み進むことができた。 アンゲリカの卒業後,コルネリウスの存在がどれほど心強かったか。 コルネリウスの卒業後はどうしようかと思ったほどだ。 その後はコルネリウスの婚約者レオノーレや旧ヴェローニカ派のマティアスなどがしっかり護衛してくれ安心だったが。 コルネリウスと同じくローゼマインが領主の養女となった時からの護衛騎士,アンゲリカ。 彼女はどう見ても良家のお嬢様にしか見えない美少女なのに頭を使うことが大嫌いで,騎士としては実に優秀。 優秀な部分と残念な部分の落差が面白く,アンゲリカが出てくる度に楽しかった。 脳筋の愛されキャラだ。 ローゼマインの義兄エックハルトとはお互い明後日の方向でお似合いで,アンゲリカとエックハルトの結婚生活というものがあるとしたら見てみたいものだと思う。 貴族院以降の側近で最重要人物はハルトムートだろう。 とにかくとても優秀でキモイ。 ローゼマインを心底崇拝し,ローゼマインの素晴らしさを布教するために全力でその優秀さを使うのだ。 頼もしいことこの上ないし,キモイことこの上ない。 この若さでこんなにも優秀なのだから,将来はフェルディナンドに名を捧げて仕えるユストクスに負けない文官になること請け合いだ。 同じく異常なまでにローゼマインに心酔しているクラリッサとの婚約は,ローゼマインとフェルディナンドと同じくらい運命的な組み合わせと言えよう。 クラリッサも実に危なっかしく優秀で頼もしかったものだ。 しかし基本的に自分勝手で非常識なローゼマインが,余りある欠点を全て受け入れた上で側近達に尊敬され大切にされることは,やはりとても解せない気がした。 側近はローゼマインの保護者たちによって厳しく選別され吟味されて選ばれているのだし,派閥争いなどを考えれば自分にとって都合が良い人物に肩入れして仕えることになるのはわかるが,能力は高いのに非常識な姫君など,裏では嫉みそねみ失笑の対象になりそうなものではないか? 彼女の身内のためなら何だってする性格は,優しさとはちょっと違う気がする。 ローゼマイン,あんなに性格が悪いのに尊敬されすぎだし愛されすぎだ。 マインの家族が不思議 マイン時代の下町の家族は,マインがどんな立場になろうとも見捨てることはなく見守り続ける。 マインと姉のトゥーリはめちゃくちゃ仲が良いし,父親は命を省みない子煩悩。 母親は父より落ち着いているが,マインのために行動する覚悟は父親に負けない。 だが,仲の良い家族,愛に溢れた家族などという言葉一つで説明できないほど,いつまで経っても彼らはマインとの関係を重要視し続ける。 彼ら自身の下町に根付いた生活があるはずなのに? 姉のトゥーリがマインやルッツに刺激を受けて上を目指して頑張るのは,まだわかる。 だが,マインが街を出て移動するなら自分もと,幾ら仲が良かったとしても姉がいつまでも思い続けるだろうか。 幾ら仲の良い姉妹であっても,成長し,成人し,幼い頃考えていたのとは異なる人生を歩んでいくのが普通だと思う。 姉には姉の人生があり,恋人が出来たり,他にやりたいことができたりするだろう。 が,トゥーリの眼中にはそういったことは一切なく,将来マインが街を出て領地を出て行くならば,自分もマインについて行ってマインの役に立つ仕事をしようと考え,実行し,成人してもそれを貫く。 最後には両親もトゥーリも,マインには思い入れがないはずの弟のカミルまで,領地をまたいでマインのいる街へ引っ越して行く。 トゥーリと母のエーファはローゼマイン専属職人という建前があるが,父親はその家族として仕事も辞めて引っ越すのだ。 街の職人達には各々ギルドがあって職人の世界にはしっかりしたルールがあるはずなのに,そういうのは良いのだろうか。 マインが貴族界へ引き取られ,元の家族とは一切関係ないと契約魔法を結んでから,トゥーリが成人するほどの長い年月が流れているのに。 ルッツやベンノなど商人達がローゼマインと共に移動して仕事をするのはわかるのだが,マインの家族に関しては何だかできすぎみたいな印象だった。 重ねて言おう,マインあんなに性格が悪いのに異常なまでに愛されすぎだ。 神話で彩られた世界観がよく作り込まれている 魔力が存在する世界が舞台となる物語は珍しくないが,ここまでしっかりと神話が作り込まれている作品は少ないのではないかと思う。 闇の神に光の女神,その子供達である五柱の神々,水の女神フリュートレーネ,火の神ライデンシャフト,風の女神シュツェーリア,土の女神ゲドゥルリーヒ,命の神エーヴィリーベ,そしてその神々の眷属。 神々の属性と貴族が持つ魔力は対になっており,自然現象までもが神々のご加護と魔力で説明される。 第一部では魔力は商人の契約魔法程度しか登場しないが,物語が進み世界観への理解が深まるにつれ,魔力と神々の関係が細やかに設定されていたことに気づき感動した。 神話と世界の一体感がすごくて,この世界が実在していないのが不思議になったほどだった。 政治の仕組みは雑すぎる ツェント(王)がいて国を治め,アウブ(領主)がいて領民を治め,ギーベがいて領地内の地域を管理する。 年に一度の領主会議で国の重要事項は決定される。 領主会議に出席するのは,王と領主と領主の第一夫人だ。 領地内は貴族の冬の社交で何となく決まる? 王の命令には逆らえず,ほぼ絶対王政。 領地内では領主に逆らえないが,大領地・中領地・小領地などの身分差で領主も他領地との関係は自由にならない。 議会のような制度はなさそうで,王命と領主会議だけで国が動いているようだ。 マインの父親は兵士だが,軍隊の指揮系統がどのようになっているのかは謎。 アウブの護衛は騎士団が行い,騎士団と軍?の関係もよくわからない。 そもそも「兵士」は何に属し誰の指揮で動いているのか? 法律の仕組みも分からない。 まぁこのような設定がよく分からなくても物語には関係ないし,面白かったので特に問題は感じなかったのだが。

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本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~

本好きの下剋上 オティーリエ

【本好きの下剋上(第1期/第2期)】アニメ無料動画の全話フル視聴まとめ【司書になるためには手段を選んでいられません】 2歳年下の妹がいる。 フロレンツィアから生まれたばかりのヴィルフリートを取り上げ、抱くことも教育することも禁じ、自ら甘やかせて育てる。 そしてアレキサンドリアという都市の領主になったローゼマインは、また前のように家族達に会いに行く権利を遂に得ます。 第15話(第2部)『神殿の巫女見習い』 いよいよ神殿の巫女見習いになることになったマイン。 マインの異世界奮闘の場が貴族達とも関わりのあるような一段上のレベルの階層へと移っていくんですね。 専属絵師になってくれるか?というローゼマインの問いを受け、ローゼマインが成人時に連れていく者の印である、紋章入りの魔石を笑顔で受け取った。 本好きの下剋上(アニメ)がつまらない・面白くない?ひどいの評判の原因についても ヴェローニカの所業は聞かされたことはあっても殆ど理解していないようで、ギーベ・ライゼガングにそのことを指摘され、自身とシャルロッテとの扱いの差も知らず驚いていた。 商人ギルドがもともと取り扱っていた営業をインク協会長になった途端に独占したためグスタフには疎まれている。 しかし、前世での母との薄い関係を悔いたために今世での家族を大切に思うマインにとって、養子縁組は受け入れがたい選択だった。 その話を聞いたマインは……。 マインが作ったパルゥケーキに感動し、以降マインの面倒を見るようになる。 3商品概要 発売日 11月29日 価格 2,800円+税 品番 VTBF-209 収録内容 第七章~第九章、第七章オーディオコメンタリー DVD Vol. 実家から派遣された侍女が2人、芸術を楽しむための灰色巫女を6人、下働きや実務のために灰色神官を4人、そのほか料理人や助手がいて、家庭教師を数人雇っていた。 【73. 2商品概要 発売日 11月8日 価格 2,800円+税 品番 VTBF-208 収録内容 第四章~第六章、第五章オーディオコメンタリー DVD Vol. — むく kkePwfOBtD0wRcl 本好きの下剋上、第22話見ました。 身食いで、少し強めの中級貴族ほどの魔力を持つ。 権力のある実家を持つため、神殿長の座についている。 第10話『二度目の冬に向けて』 すっかりフリーダに気に入られたマイン。 話としては、本という存在が人の手書きに頼っていて非常に希少な物であった古代中世的な世界観の中で、いかに本という物を広め普及させていくかというのが骨子であるようなので、まだその世界の説明だけでストーリーのとっかかりにもほとんど至っていない現時点では作品そのものを評するのは時期尚早、今後の展開に期待と言うしかない。

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本好きの下剋上の登場人物

本好きの下剋上 オティーリエ

今日レッサーバスは大きめだ。 わたしの側仕えであるフランとモニカとニコラ、専属料理人のフーゴと城の料理人が四人、神官長の側仕えが二人、それから、星結びの儀式に必要な神具、わたしと神官長の儀式用の衣装、側仕え達の食料や着替えなど、大量の荷物が載せられているのだ。 そして、城側からの同行者はオティーリエとブリュンヒルデ、ハルトムート、護衛騎士のアンゲリカとレオノーレである。 ライゼガングに泊まるので、親戚筋や身分の高い者を優先することになった。 ダームエル、ユーディット、フィリーネ、リーゼレータ、リヒャルダがお留守番である。 コルネリウス兄様はわたしの護衛騎士ではなく、新郎側の親族として同行している。 同様に、お父様も今日は騎士団長ではなく、新郎の父親である。 養父様の護衛騎士は副団長を中心に編成されている。 領主一族の参加を、と言われているので、領主夫妻だけではなく、ヴィルフリートとシャルロッテも一緒だ。 領主一族というならば、ボニファティウスも同行するべきだが、対外的にはすでに引退表明をしているので、城の守りのためにお留守番してもらっている。 これだけの人数がそれぞれの側近を連れているため、城がかなり手薄になるのだ。 儀式を行う神殿組とその側仕え、領主一族とその側近、護衛のための騎士団、新郎はランプレヒト兄様だけではなく、フロイデンという人もいて、その家族も一緒だ。 今回の同行者について説明を受けた時、わたしはその規模に驚いた。 「ものすごく多いですね」 「アーレンスバッハがアウブの姪という立場と領地間の緊張を前面に押し出してこなければ、これだけの規模にはならなかったであろう」 神官長の説明によると、通常の貴族で、他領からの輿入れがある場合、それぞれの領主の許可を得た後、親族だけで境界にある門へと迎えに行き、お互いに挨拶をして、花嫁や花婿を連れて帰ってくるそうだ。 この時点ではまだ儀式を終えていない婚約者の状態で、正式な婚姻は夏の星結びの儀式を待つことになる。 「通常の貴族ではない場合とはどういう場合ですか?」 「領主候補生や王族の婚姻はまた違うのだ」 王族や領主候補生の婚姻は、領主だけでなく、王の許可が必要になるため、領主会議の時に中央神殿から神殿長がやってきて、星結びの儀式が行われるのだそうだ。 神の意志を取りに行く時に通った祭壇のある礼拝室で星結びの儀式を執り行い、その後、領地ではお披露目のみが行われるらしい。 どちらにせよ、今回のように、境界線上で儀式を行うことはないようだ。 「今回の輿入れがこれほどに大袈裟になったのは何故でしょうね? わたくしはアウブ・アーレンスバッハが可愛い姪を心配して、くれぐれもよろしく、と念を押すために、わざわざ境界線上の門で星結びの儀式を行うことになった、と考えているのですけれど」 ライゼガングの血が濃い家に嫁ぐアウレーリアを、ガブリエーレの時のように蔑ろにするな、というアーレンスバッハ側からのメッセージに違いない、と考えている。 「だが、それだけが目的ではないであろう。 ランプレヒトの言葉を信用するならば、花嫁はフレーベルターク出身の第三夫人の娘だ。 これほど大袈裟にする必要はない。 中央やクラッセンブルクとの取引を決め、アーレンスバッハから距離を取ろうとしているエーレンフェストを牽制するのが一番の目的ではないか? アーレンスバッハにも焦りがあるのだろう」 神官長はそう言って、溜息を吐いた。 「これまではヴェローニカ派、言うなれば、アーレンスバッハの影響の強い派閥が数十年もの間、エーレンフェストで最大の力を誇っていた。 そして、アーレンスバッハの血を引いたジルヴェスターが領主となったことで、それは盤石となるはずだった。 だが、ジルヴェスターは君を救い、前神殿長と母親であるヴェローニカを断罪することで、自分の地盤だった派閥をごっそりと切り落とした」 神官長の言葉で、わたしは養父様の状況をやっと察することができた。 貴族の派閥関係が全く理解できていなかった時は、「なんで、こんなやりたい放題の罪人がのさばるのを許すのか」と思っていたけれど、あの断罪は領主であるために必要な自分の派閥を切り離す行為だったようだ。 わたしの立場に置き換えると、領主夫妻、兄妹、お父様やお母様、側近達のほとんどに何らかの処分を与えたり、遠ざけたりすることを意味する。 そうなれば、それほど身近ではなかった貴族と、これまでの恨みを抱えた反対派の貴族に味方がほとんどいない状態で立ち向かわなければならなくなる。 後ろ盾がなくなることの意味を知ると、それはひどく恐ろしいことだった。 「ジルヴェスターが必要だと考えて行ったことだ。 実際に、必要だった。 君がそんな顔をする必要はない。 ……それに、アーレンスバッハの今回の目的には、貴族院で見ることができなかった君を観察することも含まれると思う」 「何度も言われたから、わかっています。 神官長に声をかけられるまで、自発的に動かない。 祝福は最小限に抑えるのですよね?」 保護者の言う通りに動いているだけですよ、と見せかけるため、わたしは親の後ろをついて歩く雛鳥のように神官長の後ろをうろついて、隠れている予定なのだ。 朝早くに出発すると、お昼までにはライゼガングに到着することができた。 祈念式であちらこちらの冬の館を巡りながら移動した時に比べると、真っ直ぐに突き進むだけなので、かなり速かった。 中級以上の貴族ばかりによる騎獣での移動なので、スピードを上げることができたことも大きいだろう。 「ようこそいらっしゃいました」 ライゼガング伯爵達が出迎えてくれて、領主夫妻やヴィルフリートとシャルロッテ達は屋敷の中に入っていくが、わたしはすぐには入れない。 離れても騎獣の維持ができるようにして、フラン達に指示を出さなければならないのだ。 離れの前に城からの側近達を待たせておいて、わたしと神官長は神殿組に指示を出していく。 「昼食を終えたら、着替えるために離れへ参ります。 その準備をしておいてください」 「かしこまりました」 祈念式の時と同様に、神官や巫女はライゼガング伯爵の館には入れない。 離れで泊まることになる。 そのため、食料の準備が必要だったし、わたしと神官長も儀式用の服に着替える時は離れに行かなければならないそうだ。 それが普通だと言われると、収穫祭でわたし達の世話をするために灰色神官達の自由な出入りを認めていたイルクナーは、やはりかなり緩かったのだと思う。 「祭壇の準備をするために、我々は先に境界の門へと向かうことになる。 あまり余裕はないぞ」 神官長の言葉に灰色神官達が動き出す。 離れを掃除して、エラの準備してくれたお弁当を食べ、着替えに必要な荷物を運び込んでおかなくてはならない。 結構忙しいだろう。 動き始めた灰色神官達を見た後、わたしと神官長は自分の側近達と屋敷へ向かった。 「料理人はこちらです」 フーゴや城から連れてきた宮廷料理人は、花嫁達を歓迎する今夜の宴のための助っ人だ。 宿泊費代わりに、曾祖父様が買ってくれたレシピ集の正しい作り方を見せるのである。 部屋を割り振られ、昼食を食べたら、神殿長の儀式服に着替えて、神殿組は先に出発だ。 神殿組と言っても、わたしと神官長の側近達も含まれる。 門では儀式を行うことがないので、当然のことながら、祭壇もない。 簡易の祭壇を作らなければならないのだ。 同時に、不意の襲撃等に備えるために、門の待合室や儀式が行われる部屋に神官長が色々と細工することになっている。 わたしはモニカとニコラに着替えさせてもらい、レッサーバスへと乗り込んだ。 助手席にアンゲリカ、後部座席に灰色神官達が乗り込んだのを確認して、出発である。 ライゼガングから更に南へ向かって空を駆けていく。 「……え?」 青色巫女時代の祈念式の時は、上空から見ると、エーレンフェストもアーレンスバッハも違いはなく、ずっと同じような森が続いていた。 当然のことだが、境界線がどこにあるのかわからなかった。 けれど、今回は境界線が目に見える。 本当にきっちりと線を引いたように、豊かな森と低木の草原に分かれているのだ。 ここしばらくは、直轄地の祈念式や収穫祭ばかりで、貴族の管轄する南の端まで来なかったから、ここまで境界線付近の光景が変化していることを知らなかった。 わたしが神官長へと視線を向けると、神官長が難しい顔で目を細めて眼下を見下ろしているのが見えた。 やはり、尋常とは言えない事態になっているようだ。 色々と神官長に質問したかったけれど、緊急事態でもないのに、騎獣越しに声を張り上げるのは、「領主の養女としていかがなものか」と言われるのが目に見えている。 仕方がないので、門まで我慢することにした。 領地と領地の境界線を貴族が越えると領主にはわかるそうだ。 逆に言うと、貴族の基準に満たない魔力の持ち主では感知できない。 この境界を守る結界のおかげで、領主は他領の貴族の侵略をいち早く察知することができるらしい。 そして、貴族が侵略等の疑いをかけられぬように、手続きをして他領に出入りするために設けられているのが、境界門である。 「……あれが境界門ですか」 「間違う心配がないところが素敵ですね」 アンゲリカの言う通り、間違える心配だけはなさそうだ。 街道があるので、その部分が多少は開けているものの、周りに森が広がる中に白くて巨大な門だけがドーンとあるのだから、上空からでも非常に目立って見える。 輿入れで貴族が利用することを前提に作られているので、街の門よりずっと大きくて広いのだ。 ただ、街壁と違って、境界門からは目には見えない結界が伸びているので、森の中に門だけがあって、かなり変な感じがする。 「ローゼマイン様、フェルディナンド様、お待ちしておりました」 境界門に到着すると、門の番をする騎士達が出迎えてくれた。 当然、この境界門にはエーレンフェストの騎士だけではなく、アーレンスバッハの騎士もいる。 「本日は双方の領地から領主一族が集まる大仕事ですから、大変でしょうけれど、よろしくお願いいたしますね」 わたしは神官長の指示通りに両方の代表者に挨拶し、神官長に渡された革袋をそれぞれの代表に渡した。 ジャラリと音がする革袋に入っているのは、後で境界門に詰めている騎士達が祝い酒を飲むためのお金だ。 祝い酒の現物は、何かを混入される危険性があるため、こちらからは準備しない方が無難だということになったのである。 現物がないので、任務中にこっそりと飲む者が出ないし、皆の前で渡しているので、代表者が着服することもできないだろう。 「恐れ入ります」 大仕事の後の打ち上げ用にお金が渡されたためか、騎士達の顔にほんの少し笑みが浮かぶ。 第一印象は大事だ。 ひとまず喜んでもらえたようなので、わたしはエーレンフェストの騎士に儀式を行う部屋へと案内してもらった。 「神官達は祭壇の準備を整えよ。 ローゼマインは待合室で待機だ」 神官長が指示を出し、フラン達によって運び込まれていく荷物をちらりと見て、全ての荷物が運び出されていることを確認した後は騎獣を片付けて、待合室へと向かう。 フラン達が準備している間、わたしの世話は城側の側近がしてくれるのだ。 オティーリエとブリュンヒルデが動き回り、お茶を淹れてくれた。 お茶請けはエラが出発前に準備してくれたクッキーだ。 もしゃもしゃ食べていると、ある程度の指示を出し、魔術具等の設置が終わったのか、神官長も待合室へとやってきた。 すぐにユストクスがお茶を淹れ始める。 神官長の側近にはユストクスと他に知らない顔が数人いる。 エックハルト兄様の姿がないのは不思議な感じがした。 今日の儀式や役割分担のおさらいをした後、わたしは神官長に上空から見た景色の話題を振る。 「……それにしても、ずいぶんと景色が変わりましたね。 わたくしの記憶と違うのですけれど、あの時、襲撃された場所と同じですよね?」 あの時、できちんと通じたようだ。 神官長は眉を寄せながら、「まぁ、おおよそ同じだ」と頷いた。 この目立つ門が視界に入っていなかったので、多少離れてはいるけれど、アーレンスバッハとの境界近くという意味では同じようなものだ。 神官長は腰のベルトに下げていた革袋の中から、盗聴防止の魔術具を出して、わたしに向かって差し出す。 「アーレンスバッハの騎士もいるからな」と諦めたような溜息と共に小声で言われ、わたしは自分がまた失言したことを知った。 「ごめんなさい」 「まぁ、良い。 おそらくこの境界付近は、ビンデバルト伯爵の管轄だったのであろう。 ビンデバルト伯爵が処分を受けた後、派遣された貴族の魔力が足りていないのか、この地への罰として貴族が派遣されていないのか、そもそもアーレンスバッハ全体の魔力が落ちているせいなのか。 ……いずれにせよ、アーレンスバッハはずいぶんと魔力に困窮しているようだな」 神官長の言葉に、わたしはむぅっと唇を尖らせる。 「それほど魔力に困窮した中で、二人も花嫁を輿入れさせる目的は何でしょうね? 領主の姪ということは、上級貴族で、魔力圧縮前のランプレヒト兄様より魔力があるのでしょう? 貴重な人材だと思うのですけれど……」 「二人の花嫁以上の対価を要求してくるに決まっている。 まだ狙いはわからぬが……」 圧倒的に情報が足りない、そう言いながら神官長がお茶を飲んだ。 祭壇が整った頃、エーレンフェストの者達が到着し、その後、アーレンスバッハの人達も到着した。 長ったらしい挨拶を領主同士が交わしている。 それをぼんやりと聞きながら、わたしはアーレンスバッハ側の人達を観察していた。 ヴェールを被っていて、よく顔立ちが見えない花嫁達は後ろの方にいるため、挨拶をしているアウブ・アーレンスバッハとその一族が一番に視界に入ってきた。 ……これがアウブ・アーレンスバッハか。 アウブ・アーレンスバッハはおじいさんと言ってもよいくらいの年の人だ。 50代半ばから後半ではないだろうか。 ゲオルギーネが隣に並ぶと親子ほどに年が違い、そこにディートリンデが一緒にいると、完全に三世代に見えた。 アウブ・アーレンスバッハに隠れるように、ディートリンデよりも更に幼い、わたしと同じ年くらいの女の子が一緒にいた。 金髪碧眼の、それは、それは可愛い子だ。 ……あの子がもう一人の領主候補生なのかな? 領主候補生ならば、領主の子に違いないだろうけれど、ゲオルギーネの子ではないはずだ。 ディートリンデが末娘だと聞いたことがある。 それに、ゲオルギーネとは顔立ちも違うし、立ち位置から考えても親子の距離ではない。 ……他にも奥さんがいるのか、それとも、わたしと同じように傍系からの養女かな? アーレンスバッハの領主一族を見ているうちに、領主間の挨拶は終わったようだ。 ゲオルギーネは柔和な微笑みを浮かべて、アウブ・アーレンスバッハから半歩下がったところに控えている。 控えめな妻の印象で、エーレンフェストで見た時と何だか違って見えた。 そして、ディートリンデが微笑みながら、ヴィルフリートに挨拶してくる。 それに、ヴィルフリートも答えていた。 「ヴィルフリート、貴方、ローゼマインと婚約したのですって?……二人の関係が変わったようには見えられませんけれど」 「ローゼマインとは元々家族ですから、変わりません」 「そうですの」 その後、ディートリンデがシャルロッテとも無難に初対面の挨拶を交わすのを視界の端に映しながら、わたしはランプレヒト兄様の花嫁アウレーリアとその家族へと視線を向けた。 アウレーリアはヴェールを被っているので、顔立ちがあまりはっきりとはしない。 けれど、領主の姪として嫁ぐ、と事前に言われているだけあって、かなり豪華な衣装をまとっていた。 女性にしては背がやや高く、ランプレヒト兄様と並ぶとちょうど良い感じだ。 アウレーリアの父親も、アウブ・アーレンスバッハと同じく、結構高齢だ。 下手したら、初孫は成人している世代である。 アウレーリアの母親である第三夫人は遅くにもらった妻なのだろう。 第三夫人はお母様とあまり変わらないくらいの年に見えた。 そして、母親と一緒に並んでいる少女へと視線を向ける。 ……あの子が、愛想が良く、機転が利いて可愛がられているという妹なのかな? ちょっとトゥーリに似てるかも。 ふわふわとした髪を三つ編みにしている様子とにこにことしていて、活動的で明るい雰囲気が何となくトゥーリと似て見えた。 パッと見た年齢もトゥーリと同じくらいだ。 トゥーリは周囲に比べて発育が良いので、多分ディートリンデと同じくらいの年頃だろう。 多少学年に違いがあっても貴族院に在学しているのは間違いないと思う。 アウレーリア達の背後には、フロイデンの親族とその花嫁となるアーレンスバッハの中級貴族の親族が挨拶を交わしているのが見えた。 「では、星結びの儀式を始めよう」 神官長の采配によって、星結びの儀式は始められる。 祭壇のある部屋へと親族達が移動し、新郎新婦とわたしの側近と神官長の側近が待合室に残された。 「貴女がランプレヒトの妹で、今回の儀式を行う神殿長ですか? エーレンフェストの聖女と伺っておりますけれど、そのように幼くて大丈夫ですの?」 アウレーリアの声にわたしは驚いて振り返った。 接触するなと言われているけれど、話しかけられて、無視をするわけにはいかない。 わたしが振り返ると同時に、スッと前に出た警戒態勢のアンゲリカや側近達に囲まれた。 それに呼応するように、花嫁側の護衛騎士も目を細めて、警戒態勢を取る。 「お慶びの場で物騒な気配を漂わせるのではありませんよ」 側近達の後ろからそう言って、わたしはアウレーリアにも声をかける。 「このような子供に大事な儀式を任せるのは、アーレンスバッハにとって不安なことかもしれませんけれど、わたくしは神殿長として何度も儀式を行っています。 きちんと祝福を贈りますから、ご安心くださいませ」 「ローゼマイン様、接触は禁じられております」 側近達の言葉に、わたしは後で保護者達に叱られるのを覚悟した上で、つーんと顔を逸らしながら、胸を張った。 「接触はしておりません。 これはわたくしの独り言です」 「ずいぶんと大きな独り言ですね」 何と言われようと独り言だ、とわたしが言い張っていると、アーレンスバッハ側からか細い声が響いてきた。 幾人もの人達に阻まれているのでよくわからないけれど、多分、アウレーリアだと思う。 「……わたくしも独り言なのですけれど、祝福、していただけるのですか?」 驚きが含まれた不安そうな声に、わたしは目を瞬いた。 エーレンフェストの内部が分裂しているのは、旧ヴェローニカ派からアーレンスバッハへ情報が回っているはずだ。 こちらにとってはアーレンスバッハ側のごり押しだが、もしかしたら、花嫁達にとっても権力による上からのごり押しだったのかもしれない。 もし、そんな状況ならば、大変な状況の中へ嫁ぐことになったことを一番不安に思うのは、二人の花嫁達だ。 「これは独り言ですけれど、新しい夫婦を祝福するのは当然ではありませんか。 そのためにわたくしはここにいるのです。 ……領地が複雑な状況ですから、お互いに不安は多いでしょう。 けれど、エーレンフェストでの生活は、夫婦二人で話し合い、支え合い、二人で選択して作り上げていくものです。 それが幸せに満ちたものになるよう、わたくしは願っております」 お互いの護衛騎士が顔を見合わせて、溜息交じりに下がったことで、待合室の中の雰囲気が和らいだ。 同時に、「神殿長、ご入場ください」というフランの声が扉の向こうから聞こえてきた。 わたしは二人の花嫁に向かって、ニコリと笑った後、聖典を抱えて、開かれた扉へと向かう。 アーレンスバッハ側からの強い視線を感じながら、わたしは真っ直ぐに祭壇前にいる神官長の方へと向かって歩いた。 この大事な式で裾を踏んで転ばないように、細心の注意を払って。 聖典を置くための祭壇の後ろ側には、わたし用の踏み台が置かれている。 いつも通り、神官長に聖典を渡して、祭壇に置いてもらうと、わたしは台に上がった。 わたしの準備ができると、神官長が声を上げる。 「これより星結びの儀式を始める。 新郎新婦はこれへ!」 灰色神官によって開かれた扉から、新郎新婦が入場してきた。 お互いの騎士団が緊張感を見せる中の儀式ではあるけれど、親族からは拍手とお祝いの声がかけられるのを、わたしは少しホッとした気分で見下ろしていた。 神官長による聖典のお話があり、その後は、両方の領主が立ち会う中、二組の新郎新婦に結婚の意志を問う。 エーレンフェストへと嫁ぐので、婚姻の書類を準備するのはエーレンフェスト側だ。 養父様が取り出した書類に、魔術具のペンを使って、新郎新婦がサインしていく。 金色に燃え上がる契約書類が二枚、全て綺麗に消えてしまうと、婚姻は成立である。 「新たなる夫婦の誕生に神殿長からの祝福を」 ここでわたしの出番である。 祝福の量を調節するために、予め魔力を込めていた魔石が神官長からわたしへと渡された。 この魔石の魔力だけで祝福を行うのだ。 神官長による「やりすぎ防止作戦」である。 絶対に余計なことはするな、という神官長の視線に軽く頷き、わたしは一度深呼吸をした後、神に祈りを捧げた。 「高く亭亭たる大空を司る、最高神は闇と光の夫婦神よ 我の祈りを聞き届け 新しき夫婦の誕生に 御身が祝福を与え給え 御身に捧ぐは彼らの想い 祈りと感謝を捧げて 聖なる御加護を賜わらん」 最高神の夫婦神の祝福を祈れば、いつも通り指輪から金の光と黒の光が渦巻き、天井付近へと飛んでいく。 そして、金と黒が捻じれあい、重なり合い、弾けた。 全てが小さな光の粒となって、飛び散って、新郎新婦に降り注いでいく。 今回は控えろと言われたし、新郎新婦が二組なので、それほど大きな祝福ではない。 感情によって左右されるというわたしの祝福が、四人に平等に飛んでいったことに安堵の息を吐いていると、アーレンスバッハ側からは「ほぉ……」という感嘆の感情が籠った吐息が漏れた。 「素晴らしい祝福であった。 エーレンフェストの聖女」 「恐れ入ります」 アウブ・アーレンスバッハがフッと笑みを見せる。 だが、その視線はわたしではなく、神官長へと向けられていた。

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